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初めてのhERGベストプラクティス試験  ~その2:従来法と何が違う?~

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電位プロトコル

hERGベストプラクティス試験では、使用する電位プロトコルや刺激頻度、実施温度が従来法と異なります。(表1

表1 電位プロトコル

 
hERGベストプラクティス
DSTC従来法
 
電位プロトコル  
刺激頻度 5秒に1回 15秒に1回
実施温度 36.0 ± 1.0°C 室温 or 36.0 ± 1.0°C
液間電位補正* +15 mV なし

*: 細胞内液と外液は組成が異なるため、その境界で小さな電位差(ズレ)が生じます。これを液間電位といいます。測定系に影響する場合は補正が必要です。

細胞内外液

細胞内外液組成も違います。(表2、表3

表2 細胞外液

組成 hERGベストプラクティス 従来法
NaCl 130 mmol/L 137 mmol/L
KCl 5 mmol/L 4 mmol/L
CaCl2 1 mmol/L 1.8 mmol/L
MgCl2 1 mmol/L 1 mmol/L
D(+)-Glucose 12.5 mmol/L 10 mmol/L
HEPES 10 mmol/L 10 mmol/L
5 mol/L NaOH pH 7.4 -
1 mol/L NaOH - pH 7.4



表3 細胞内液

組成 hERGベストプラクティス 従来法
K-gluconate 120 mmol/L -
KCl 20 mmol/L 130 mmol/L
MgCl2 - 1 mmol/L
EGTA 5 mmol/L 5 mmol/L
MgATP 1.5 mmol/L 5 mmol/L
HEPES 10 mmol/L 10 mmol/L
1 mol/L KOH pH 7.3 pH 7.2

データ品質

hERGベストプラクティス試験で得られたデータは、細胞ごとに以下の項目の経時推移プロットを記載し、データの品質を示す必要があります。

➀被験物質添加前後の電流値

②インプットレジスタンス

③保持電流



②:きれいな測定ができているかどうかの指標となります。
膜電位を少し変化させたときに(ここでは10 mVのパルスを入れる)、流れる電流の大きさからオームの法則(R = V/I)で算出。数値が高ければ漏れ電流が少なく、きれいな測定ができています。数値が低ければ漏れ電流が多く、データの質が低くなります。

 

被験物質適用後には、十分に高い濃度の阻害薬を適用して細胞のバックグラウンドの残留電流を測定することが求められています。hERGの場合はE-40311 μmol/L)を適用し、解析時に残留電流を差し引きます。

算出する評価項目

IC50値及びHill係数を算出します。

それぞれ95%信頼区間と併せて提示し、IC50の単位はμmol/Lとμg/mLの両単位で報告します。

ベストプラクティス試験はIC50算出を目的としていますので、評価の際には濃度設定根拠(妥当性)が必要になってきます。

陽性対照と陰性対照

陽性対照薬はICH E14/S7BガイドラインQ&A 1.2で言及された基準薬(Moxifloxacin Ondansetron Dofetilide)の一つとし、抑制率が20~80%になる2濃度以上を設定しなければならないとされています。DSTCではMoxifloxacinを4濃度設定し、2濃度ずつ累積適用しています。(ベストプラクティスでは累積適用は2濃度までとされています)

試験毎にIC50を算出し、DSTCの背景データと比較して許容範囲内である場合に試験成立としています。

陰性対照の設定も必要であり、DSTCではDMSO 0.1 vol%~0.3 vol%を設定することが多いです。 

濃度測定

ベストプラクティス試験では、適用する被験物質の濃度確認が求められます。

DSTCではパッチクランプ試験前にサテライトで実施しています。

 

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