
急性毒性試験とは?
化学物質や製品の安全性評価のために動物(マウスまたはラット)に単回(短期)で被験物質を大量に投与し、毒性について観察・評価する方法です。
投与経路は経口、経皮、吸入があります。
実験結果からGHS分類やLD50の推定をすることができ、SDS作成に用いることができます。
OECD GLPのほか、医薬品や医薬部外品ガイドライン等にも対応しています。
LD50(半数致死量)とは?
急性毒性試験において、その用量を摂取した動物のうち、半数の個体が死亡すると予測される値であり、数値が小さいほど毒性が高く、数値が大きいほど毒性が低くなります。
<経口投与における毒性区分>
用量 (mg/kg) | GHS区分 |
0<LD50≦5 | 区分1 |
5<LD50≦50 | 区分2 |
50<LD50≦300 | 区分3 |
300<LD50≦2000 | 区分4 |
2000<LD50≦5000 | 区分5/区分外 |
日本ではLD50≦50 mg/kgのものは毒物、LD50≦300 mg/kgのものは劇物と規定しています。
<LD50の例>
物質名 | LD50値 |
食塩 | 3000 mg/kg |
砂糖 | 29700 mg/kg |
エタノール (アルコール) | 7000 mg/kg |
青酸カリウム | 5 - 10 mg/kg |
テトロドトキシン (フグ毒) | 0.01 mg/kg |
参考:「職場のあんぜんサイト」「Pubchem」
DSTCで行える急性毒性試験について
急性経口毒性試験
被験物質を媒体に溶解または懸濁し、胃ゾンデを用いて動物に投与します。
媒体は主に水または植物油を使用します。
観察項目:一般状態、体重測定、剖検
試験に必要な被験物質量:6 g
<OECD TG420>
見当付け試験として1匹に投与し、死亡がみられない要領で主試験として4匹に投与することでLD50を推定します。
使用動物数:
2000 mg/kg用量から投与開始した場合は5匹(限度試験)、
毒性情報がなければ300 mg/kg用量から投与開始し、LD50が2000 mg/kg以上となる場合6匹
<OECD TG423>
1つの用量を1回の投与につき3匹、計2回投与しLD50を推定します。
使用動物数:
2000 mg/kg用量から投与開始した場合は6匹(限度試験)、
毒性情報がなければ300 mg/kg用量から投与を開始し、LD50が2000 mg/kg以上となる場合12匹
※代替法の対応も行っております
急性経皮毒性試験
被験物質を動物の背部皮膚に投与します。
被験物質は液体および粉砕可能な固体や粉体が投与可能です。
観察項目:一般状態、体重測定、剖検
試験に必要な被験物質量:3 g
<TG402>
用量設定試験として1匹ずつ投与し、主試験で2匹に投与することでLD50を推定します。
使用動物数:
2000 mg/kg用量から投与開始した場合は3匹(限度試験)
毒性情報がなければ200 mg/kg用量から投与開始し、LD50が2000 mg/kg以上となる場合5匹
急性全身毒性試験
ISO10993-11に収載されており、主に医療機器の安全性試験に使用される試験方法です。
被験物質の抽出液をマウスまたはラットに静脈内投与または腹腔内投与し、安全性を評価します。
観察項目:一般状態、体重測定、剖検
簡易吸入毒性試験
山下法(防水スプレーの毒性評価のための試験)を参考にした試験で、サンプル暴露用のチャンバーに動物を収容し、任意の暴露方法(スプレーまたは噴霧器など)でサンプルを暴露し、14日間の観察後、肺の病理組織学的検査を行い、肺への影響を評価します。
山下法における規定回数(総時間約90分)から最大6時間の噴霧(噴霧器使用)まで対応可能です
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