
DSTCの国際共同研究成果がScientific Reports誌に掲載されました
2022年より進めてきたhERGチャネル評価におけるベストプラクティスに関する国際共同研究の成果が、Scientific Reports誌に掲載されました。本研究は、Health and Environmental Sciences Institute (HESI) の主導のもと、DSTCを含む5施設が協力して実施したものです。現在、CaV1.2およびNaV1.5チャネルについても、同様の国際共同研究を進めています。
論文タイトル
Multi-laboratory comparisons of manual patch clamp hERG data generated using standardized protocols and following ICH S7B Q&A 2.1 best practices
研究の背景
TdPリスク評価におけるhERG阻害の判断は、薬剤の安全域が既知のTdP誘発剤の閾値を上回るかどうかに基づいて行われます。しかし、従来の文献データには、温度、刺激条件、電位プロトコルなどの系統的な違いや偶然的な誤差が混在しており、信頼できるhERG安全域の閾値を設定することは困難でした。ICH S7B Q&A 2.1では、より生理的条件に近いプロトコルや曝露濃度の検証など、ベストプラクティスの導入が推奨されていますが、これらがデータ精度の課題にどの程度寄与するかは十分に検証されていません。
そこで本研究では、標準化されたマニュアルパッチクランププロトコルを用いて28種類の薬剤のhERGアッセイを実施し、ベストプラクティスの適用がデータの再現性向上や施設間差の低減にどの程度寄与するかを、多施設間で比較検証しました。
主な成果
施設間の系統差
標準化された条件下でも、施設間でhERGブロック効果に系統的な差異が生じる場合があることが判明した。
再現性の変動
同一施設内でも実施時期によるばらつきが見られる場合がある。また、全薬物および全施設のデータを統合して解析すると、hERG遮断作用のポテンシーの変動はおよそ5倍である。
まとめ
本研究は、hERGデータの精度・再現性および解釈に関する課題を、多施設で体系的に検証した初の報告であり、これらの結果は、hERGデータの解釈や安全域設定における実用的なベンチマークを提供するとともに、ラボ固有のデータ特性を考慮した評価スキームの必要性を示唆しています。
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