
変異原性試験とは?
変異原性試験とは、遺伝物質(DNAやRNA)の塩基配列に変異を引き起こす可能性のある物質を見つけ出すための試験です。遺伝子突然変異と発がん性のあいだには強い関連性があると考えられているため、変異原性試験は人の健康や生活環境を守るうえで非常に重要な役割を担っています。
変異原性試験の種類
変異原性を調べる試験の代表例として、次のようなものがあります。
Ames試験(細菌を用いる復帰突然変異試験,OECD TG 471)
アミノ酸要求性の細菌に被験物質を投与し培養します。遺伝子に突然変異が生じると、アミノ酸非要求性に復帰し増殖可能となり、コロニーを形成します。そのコロニー数を陰性対照と比較することで、被験物質の変異原性の有無を判定します。
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ほ乳類培養細胞を用いる遺伝子突然変異試験(OECD TG 490)
ほ乳類培養細胞に被験物質を投与し培養します。遺伝子に突然変異が起こると薬剤耐性などの性質を獲得し、培養細胞はコロニーとして増殖します。そのコロニー数を陰性対照と比較することで、被験物質の変異原性の有無を判定します。
トランスジェニック動物を用いる遺伝子突然変異試験(OECD TG 488)
外来遺伝子を導入したマウスやラットに被験物質を投与し、目的臓器(肝臓、肺、消化管など)からDNAを回収します。DNAを大腸菌に戻して培養すると、突然変異が生じた外来遺伝子をもつ菌がコロニーやプラークを形成し、その頻度を解析して変異原性を評価します。
【まとめ】Ames試験は最も基本的な変異原性試験
ほ乳類培養細胞を用いる遺伝子突然変異試験やトランスジェニック動物を用いる遺伝子突然変異試験も「変異原性試験」に含まれますが、一般的に「変異原性試験」と言えば Ames試験 を指すことが多いです。ただし、Ames試験で用いる細菌とヒトとでは、代謝や薬物への反応が異なる可能性があるため、結果がそのままヒトに当てはまるとは限りません。この点、ほ乳類培養細胞を用いる遺伝子突然変異試験はヒトと同じ真核細胞を使うin vitro試験で、トランスジェニック動物を用いる遺伝子突然変異試験は動物を使うin vivo試験であるため、これらの結果の方がヒトで起こる反応に近いと考えられます。
しかし、Ames試験は、比較的低コストかつ短期間での試験実施が可能であり、これまでに蓄積されてきた知見も圧倒的に豊富なため、今なお、医薬品、化学物質、食品関連をはじめ、幅広い分野で最も基本的な変異原性試験として活用されています。
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