
TdPリスクをより正確に評価するために
心臓にはhERGチャネルを含め、様々なイオンチャネルが発現しています。
hERG試験において、臨床曝露量でQTc延長が示唆される場合、その薬剤は心室再分極へ影響を及ぼすリスクがあります。ICH E14/S7BガイドラインのQ&Aでは、このようなリスクに対してフォローアップ試験を行い、作用機序を検討することでTdPリスクをより正確に評価することが可能だとされています。フォローアップ試験にはナトリウムイオンチャネル(NaV1.5)やカルシウムイオンチャネル(CaV1.2)などの評価も含まれており、それらの評価を実施する際は、ガイドラインに記載されたベストプラクティスの考慮事項に従って実施することが求められます。
CaV1.2チャネル試験
CaV1.2チャネル試験では、hERGチャネル試験と同様に、ステップパルスとランプパルスを組み合わせたプロトコルを用います。このプロトコルからは、ICa-step及びICa-rampの電流が得られ、それぞれのピーク電流に対する薬剤の影響を評価します。
CaV1.2チャネル試験 測定条件
測定温度は36℃、刺激頻度は0.2 Hzです。これらの条件は、in vivoに近い電気生理特性を反映するために推奨されています。
CaV1.2チャネル試験 測定温度の重要性
薬剤の阻害活性は、温度の影響を大きく受けることが知られています。そのため、生理温度によるベストプラクティス評価は、より生体環境に近い条件でデータを取得でき、試験結果の予測性を高めるための重要なアプローチとされています。
NaV1.5チャネル試験
NaV1.5チャネル試験では、Peak電流に加えてLate電流も重要な指標として評価します。
電位プロトコルは、他のチャネルと同様に、ステップパルスとランプパルスを組み合わせた電位プロトコルです。
NaV1.5チャネル試験 測定条件
測定温度は36℃、刺激頻度は0.2 Hzです。これらの条件により、生理的環境に近い電気生理特性を再現しながら、NaV1.5 チャネルに対する薬剤の作用を評価します。
NaV1.5 Late電流測定
ATX-IIを添加することでNaV1.5 Late電流を増強します。
ATX-II添加時のPeakとLate電流それぞれについて、薬剤影響を評価します。
DSTCの取り組み
DSTCでは、CaV1.2及びNaV1.5 Peak電流評価について、受託体制を整備しております。
また、NaV1.5 Late電流評価についても、現在背景データの取得を進めており、受託開始に向けた準備を進めております。
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